瑞泉酒造

戦前の琉球泡盛を体験しているような気分になれる


沖縄戦を逃れ再び沖縄へ戻ってきた瑞泉菌

首里三箇の1つである崎山に130年前に創業した瑞泉酒造。首里城の目と鼻の先にあります。


沖縄県内で使用している黒麹菌の一部は、北谷町に工場を構える石川種麹店で作られる種麹を使用しています。

第2次世界大戦時、全国でも唯一の地上戦を経験した沖縄県はそのほとんどが焼け野原になり、大切に育てられていた泡盛はもちろん、泡盛造りに必要な黒麹菌もほとんどが消失してしまいました(> <)泣。

(引用:https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/okinawa-1945?utm_term=.vugRpOe21J#.hkYZegdL93)

何もかもを失った沖縄戦ですが、泡盛を造りたい守りたいという想いまでは奪われませんでした。色々な方法でアルコールを製造した歴史がありますが、泡盛を復活させるべくまずは黒麹菌を復活させることになります⭐︎

(引用:http://kurokouji.jp)

戦後、土に埋もれたニクブク(昔、製麹の時に使用していたむしろ)の中から奇跡的に黒麹菌を見つけ出したという話があります。また、石川種麹店は戦争の影響が比較的少なかった与那国島の蔵にある土壌を採取し、黒麹菌のISH1株(アワモリタイプ)を培養しました。現在はISH2株(サイトイタイプ)も加わり2種類が混ざっています。

(引用:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/105210)

沖縄戦を乗り越えてほとんどゼロから泡盛を造り始め、先人の様々な苦労があって泡盛は歴史を絶やさず現在も私たちの側にあります。本当にありがたい気持ちになりますよね⭐︎


泡盛の歴史の中でも浪漫を感じるのが「瑞泉菌」の話です。戦前に沖縄の黒麹菌を採取し保管していた方がいた事をご存知でしょうか。泡盛だけでなく、酒造業界では「酒の神様」として敬われている故・坂口謹一郎教授です。

東京大学名誉教授の坂口教授は微生物の働きに着目し様々な研究を重ねた発酵・醸造学の権威であり日本のバイオテクノロジーの礎を築いた方です。その功績は国内だけでなく世界にも及びました。

(引用:http://sakakinsan120.strikingly.com)

こよなく泡盛を愛する坂口教授は、1970年(昭和45年)に雑誌「世界」で発表した論文「君知るや銘酒泡盛」で沖縄は世界で唯一の黒麹菌の大宝庫であると述べていると同時に、黒麹菌を使って造った泡盛は世界の酒造史をみてもゆるぎない名酒であることを高く評価しています。すごいですよね♪

その後、黒麹菌は日本国内の醸造でスポットライトを浴びることになり、泡盛の名は沖縄に留まらず世界に広まりました。

さらに坂口教授は「黒麹菌という不思議なカビを育てあげ、泡盛という名酒を造りだした沖縄県民の素質と伝統に、限りない魅力を感ずる」とも述べられました。そのことを学んだ時、私は沖縄県民としてとても誇らしく感じたのを覚えていますよ(^ ^)

戦前の1935年、坂口教授は沖縄の酒造所をめぐり黒麹菌の採取をしていました。瑞泉酒造の前身である喜屋武酒造でも使用していた黒麹菌や土壌を採取しており、東京も安全の保証ができないと判断した教授は黒麹菌を戦火から免れるように実家の新潟へ疎開させていました。菌を疎開させるなんてすごい思い入れと熱意を感じます‼︎

そして、無事に戦火を免れた瑞泉酒造の黒麹菌(以下「瑞泉菌」と表記)は60年の時を経過しても東京大学で保存され生きていることを1998年6月になって確認されました。翌年の5月に瑞泉酒造ではこの瑞泉菌による戦前の味の復刻をめざし、いままでの醸造方法に細かな工夫を加え、原料米1トンのみの試験醸造をスタート、商品化に成功しました。そして出来あがった泡盛が「御酒(うさき)」です。

その当時、5tの製麹器しかなく1tを仕込むために昔のように手造りで行ったそうです。単菌での製麹で慣れてない菌を使用するので扱いに大変な苦労と苦悩がありました。

下の動画を見ていただいた方が御酒が生まれるまでに関わった方々の思いや苦労、工夫が分かりやすいので是非、ご覧ください♡

今回の見学に際し、池原さんに大変お世話になりました。瑞泉菌の種麹作りには池原さんが大活躍したそうです。その詳しいお話は今後お聞きするとして、琉球泡盛の歴史に触れたようなロマンのあるストーリーがある瑞泉酒造さんですが幅広い世代にも泡盛を手に取ってもらえるように様々な工夫をされている蔵元でもあります。今回もありがとうございました。


見学日: 2018 年02月26日 

 文:泡盛マイスター 新里 葵

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